タイは東南アジアで植民地にならなかった国家です。
そんなタイは歴史上にどんな王朝があったのでしょうか。
歴史上の人物や日本との関係とともに詳しく見てみましょう。
タイの簡単な歴史年表
タイの簡単な歴史の年表は以下の通りです。
年 | できごと |
---|---|
100万年前 | タイ北部に人が不足単位で居住 |
4000~3000年前 | タイ東北部に岩絵が見つかる |
6世紀から11世紀末 | タイ中央部と北部でドヴァーラヴァティー王国成立 |
9世紀から13世紀まで | カンボジアのクメール王朝がタイ北東部を支配 |
13世紀初頭 | タイ族初の王朝:スコータイ王朝がはじまる |
1283年 | ラームカムヘーン王時代に最盛期を迎えてタイ文字を考案 |
1351年 | アユタヤ王朝成立 |
1765年 | 泰緬戦争でアユタヤ王朝滅亡 |
1768年 | トンブリー王朝成立 |
1782年 | ラタナコーシン王朝成立 |
1932年 | 立憲革命 |
1939年 | 呼称をタイ王国にする |
1941年 | 日泰攻守同盟条約 |
1947年 | 戦後初の軍事クーデター発生 |
1967年 | ASEAN設立 |
1973年 | 血の日曜日事件 |
1992年 | 暗黒の5月事件 |
1997年 | アジア通貨危機 |
2001年 | タクシン政権樹立 |
タイの歴史
古代のタイ
タイ北部には100万年前ほどから人が部族単位で住んでいました。また、タイの東北部では4000年前から3000年前ほどに描かれた岩絵が見つかっています。この東北部のウドーンターニー県には世界遺産のバーンチェン遺跡があり、農耕文明が見つかっています。
それからモン族の国家であるドヴァーラヴァティー王国が6世期末から11世紀ごろまでタイ中央部と北部に成立しました。そして、カンボジアのクメール王朝がタイ北東部に拡大して9世紀ごろから13世紀ごろまで支配していました。
タイ族初の王朝:スコータイ王朝
クメール朝が衰退しはじめて、13世紀初頭にタイ族によるスコータイ王朝が始まります。スコータイ王朝は三代目のラームカムヘーン王時代に領土は拡大して、上座部仏教の布教や1283年にタイ文字の考案など大きな功績を残します。
また、同時期にチェンマイを中心としたランナー王朝がありましたが、経済力を背景にして支配下におきます。
スコータイ王朝は約200年間続きましたが、アユタヤ王朝の族国になりランナー王朝もビルマの属国となるのでした。
世界的な交易で栄えたアユタヤ王朝
1351年にタイ中央部でアユタヤ王朝が成立します。アユタヤ王朝は地理的に周辺国との交易に便利だったので拠点となって発展しました。スコータイ王朝を吸収して、クメール王朝にも攻め込みます。
また、その後、大航海時代を迎えたヨーロッパ、そして日本から商人が来て国際交易港として発展します。
しかし、1765年から1767年までミャンマーとタイの泰緬戦争(たいめんせんそう)が発生して、アユタヤ王朝は完敗して滅亡しまいます。
短命なトンブリー王朝
泰緬戦争後にタイから当時のミャンマー勢力を排除した、華橋の父とタイ人の母を持つタークシンはトンブリー王朝を1768年に開きます。
そして、カンボジアに侵攻する一方で、タイを狙うミャンマー軍からの防衛戦に追われました。その結果として、首相にあたる地位であったサムハナーヨックのチャオプラヤー・チャクリー(後のラーマ1世)たちによって、タークシンは処刑されます。
トンブリー王朝は15年ほどで終わるのでした。
植民地化を免れたラタナコーシン朝
タークシンを処刑したチャオプラヤー・チャクリーは、ラーマ1世となり1782年にラタナコーシン王朝を始めます。そして、1800年代にはヨーロッパから列強諸国が訪れタイの周辺国を植民地化しました。
しかし、ラーマ4世や5世の時代に米英などの欧米諸国と通称貿易条約を結んで、近代化が行われます。このおかげで欧米諸国に植民地化されることがありませんでした。
そして、1932年の立憲革命で王は象徴的存在になり、1939年にタイ王国と呼称を改めます。
日本と同盟を組み欧米と関係改善
タイは第二次世界大戦が始まると初めは中立を宣言していましたが、フランス領インドシナと紛争を起こします。
また、日本とタイは1941年に日泰攻守同盟条約を結んで同盟国となります。タイは日本の東南アジア侵攻に協力していましたが、同時に日本の拡張主義に不安を感じていました。
その後、日本の敗戦を受けてタイはアメリカやイギリスとの関係改善を早急に行って外交努力で危機を脱します。
冷戦下のタイ王国
タイでは1947年に軍事クーデターが起こり軍事政権化します。そして、1967年にバンコクでASEANの設立が宣言されました。
また、冷戦下では周辺国の共産主義革命に脅かされ、ベトナム戦争ではアメリカを支援します。この時、タイはアメリカの後方基地だったので、パッタヤーなどのリゾート開発が進みました。
一方で、ベトナム反戦運動がタイで起こり、1973年にデモ隊と警察が衝突して77人の死者を出す血の日曜日事件が起こります。アメリカが1975年に撤退した後も民主化団体と右翼集団がぶつかり合って死者を出す事件が発生しています。
その後は民主化勢力との調和が図られた政治が少しの間取られるようになりますが、1991年にスチンダー・クラープラユーンが軍事クーデターを起こして新政権を樹立します。
クーデターやデモが続く
1992年に民主化を求める市民と軍や警察が衝突して死者53人出す暗黒の5月事件が起きます。その後政治は少し安定しますが、1997年にアジア通貨危機が起こり経済が失速します。
経済が混乱する中、タクシン政権が2001年に樹立されます。強権的な政治運営でしたが経済政策では効果がありました。そして、2006年にはタクシン一族の不正蓄財疑惑が発端となって軍事クーデターが発生します。
それから数年ごとに軍事クーデターや大規模な反政府デモが起こる事態がタイでは続いています。
タイの王室(国王)の歴史
タイの王室は1782年に始まったラタナコーシン王朝が起源です。トンブリー王朝のタークシン王をラーマ1世が処刑して、ラーマ1世が始めた王朝でバンコク王朝、チャクリー王朝とも言われます。
ラーマ1世からはじまり、ラーマ10世まで代々続いています。ラーマ1世の頃にあった権威は代を追うごとに無くなっていき、ラーマ8世の時に地に落ちます。
その後、ラーマ9世は1992年の暗黒の5月事件の時に当事者の仲介を泣きながら行ったことで、国民に尊敬される国王となりました。しかし、ラーマ10世はドイツで愛人と暮らすなど波天候なことから前代未聞の王室批判が巻き起こっています。
タイの歴史上の人物
タイの偉人には、以下のような方がいます。
- スコータイ王朝ラムカムヘーン3代目国王
中世タイを繁栄させ、上座部仏教の布教やタイ文字の考案を行う - アユタヤ王朝なナレースワン21代目国王
ミャンマー(ビルマ)との戦争に勝利した軍神 - ラタナコーシン王朝ラーマ5代目国王
タイを植民地化から守り、法律の制定、教育制度や交通、郵便制度などの近代化を行う
タイと日本の歴史
歴史から読み解くタイと日本の関係
外務省よると、タイと日本には600年に渡るほどの長い交流の歴史があると言います。
アユタヤ王朝時代に、首都アユタヤに日本人町が形成されていましたが、後に日本の鎖国政策により交流が途絶えます。また、日本の明治維新に倣ってラタナコーシン王朝のラーマ5世は近代化をして植民地化を免れました。
そして、1887年に日暹(にちせん)修好通商に関する宣言(日タイ修好宣言)を結んで国交が開かれました。日本にとって東南アジア諸国と外交関係を結んだ最初の条約です。
世界大戦中の日本とタイの関係
タイは第二次世界大戦でイギリス、フランス、日本と不可侵条約を結び、フランスが降伏すると日本は現在のベトナム北部に進駐します。それに乗じてタイは領土の返還とラオス、カンボジアの宗主権返還を求めてフランスに要求します。
その結果、紛争になってタイは大打撃を受けます。その後、日本が仲裁に入って、フランスがタイに領土を返還することで事態は沈静化します。
また、日本から同盟の誘いを受けますが、タイは連合国と枢軸国のどちらが有利か見極めたかったので誘いには乗りませんでした。
しかし、やがて日本軍がフランスが支配していた東南アジアの地域を支配するようになると、やがてタイにも侵攻してくることを遅れて止むを得ず日本の同盟国となります。
それから日本が劣勢になると、日本の利用価値がなくなったので日本と距離をとって中国と共に日本を打ち負かそうという計画を立てます。
そして、国内には自由タイという抗日活動団体の存在が大きくなり、タイ政府は日本と同盟を維持しながら自由タイも支援するという策をとり、日本とタイの関係は最悪になります。
それから日本が敗戦するとすぐにイギリスやアメリカに対して柔軟な姿勢を取ることによって、日本と同じ敗戦国とは見なされなくて済むのでした。
タイの歴史に関するおすすめ本
タイの歴史を知る上でおすすめの本は以下の通りです。
「ゼロからわかる「タイ」: 「タイ」好きの東大OBが書いた入門書シリーズ (「タイ」歴史編集委員会)」は10分で読める分量に凝縮された歴史書です。こちらを読めばタイの歴史がざっくりと分かります。
そして、「タイの歴史 (世界の教科書シリーズ)」です。タイの教科書からタイではどういった視点で歴史を教えられているのか、ローカルな視点で読み解くのにぴったりです。
「物語 タイの歴史 微笑みの国の真実」は、一番スタンダードな歴史書です。タイ民族の2000年間の歴史が網羅されており、入門書としては最適な1冊です。
まとめ
今回はタイの歴史についてご紹介しました。
タイは植民地になったことがなく、日本との交流も長い歴史があります。
ぜひ、この記事を参考にしてみてください。
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