タイ政治の制度と情勢・問題をわかりやすく説明|デモ理由やタクシン派とは?

タイは東南アジアの国ですが、日本の皇室のようにタイには王室があります。

しかし、政治体制は日本と異なっているところも多いです。

そこで今回はタイの政治体制や特徴、情勢を政治問題や政治の歴史と合わせてご紹介します。

タイの政治体制と特徴

特徴は国王が存在することと、クーデターが多発することです。

それでは政治体制を詳しく見てみましょう。

王室の存在

タイは立憲君主制の国家です。元首は国王、政治をコントロールする政府とトップの首相がいます。国王、仏教、民族を三位一体の秩序と見なしており、国民主権でありながら国王は規定に基づく一定の力を持っています。ここが日本との違いですね。

また、信仰や言論の自由は保障されていますが、クーデターが多発して軍事政権になることがあるため、統制や規制がかかることもよくあります。そして、政治が行き詰まった時に指導者として国を導くのが国王の役割でもあります。

たとえば、1973年の血の日曜日事件や1992年の暗黒の5月事件など、国民と軍政が対立した場合は国王が仲裁に入ります。

ちなみに、タイでは国王の悪口を言うと不敬罪(ふけいざい)になるため、逮捕されます。

議会

議会は両院制です。

上院は元老院と呼ばれ、200議席(新憲法以降のため、2017年から5年は250議席)です。また、2017年憲法では、選挙ではなく国家平和秩序維持評議会が選びます。

下院は人民代表院と呼ばれ、500議席です。25歳以上のタイで生まれた国民に被選挙権があり、18歳以上のタイ国民に選挙権があります。

首相の任命

首相は下院議員の中から、下院の承認を得て国王によって任命されます。また、任期は連続して8年までに制限されています。

また、首相は国王への助言と承認のもとで下院を解散させることが可能です。

タイの政治情勢と問題|なぜ反政府デモが起こる?

タイの政治情勢は混乱しています。

2021年現在の国王はマハ-・ワチラロンコン・プラワチラクラーオチャオユーフア国王陛下(ラーマ10世王)、首相は国防大臣兼務のプラユット・ジャンオーチャー(Mr. Prayut Chan-o-cha)です。

現プラユット政権に不満を持った人々が大規模デモを行っており、不安定化しています。

  • プラユット政権下の選挙結果への不満
  • ラーマ10世国王への批判

プラユット政権下の選挙結果への不満

プラユット首相は2017年に憲法を制定しました。通常、首相は上院と下院の両方の議員の投票で選ばれます。新憲法では、事実上軍が上院を指名できる仕組みだったため、プラユット首相に有利となっていました。

そのため、総選挙がフェアに行われなかったとして野党や国民は不満を募らせています。

ラーマ10世国王への批判

タイには不敬罪がありますが、ラーマ10世の行動が国民の反感を買ってしまい大規模なデモへとつながっています。

たとえば、新型コロナウイルスが蔓延しているタイからラーマ10世は出国して、ドイツの高級ホテルで20人の女性と一緒に滞在していることがイギリスの新聞が報道しました。これによって国民の反感を買います。

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タイ政治の歴史|なぜクーデターが多いのか

タイ政治の仕組みを理解するためには、2001年のタクシン政権まで遡る必要があります。

なぜならば、現代のタイ政治はタクシン派と反タクシン派という構図で動いているからです。

タクシン派と反タクシン派

タクシン派と反タクシン派の特徴は以下のようになります。

タクシン派 反タクシン派
支持層 貧困層:農民やブルーカラーなど 高所得層:官僚や都市のホワイトカラー
シンボルカラー
政党 タイ貢献党 民主党

簡単に言うと、タクシン派が貧困層や低所得層を支援策を打ち出し支持を得ていました。

一方で、低所得層への支援策はバラマキだと批判したのが都市部エリートの反タクシン派です。

タクシン政権の成立

1997年にアジア通貨危機が起こりタイ経済は打撃を受けます。その影響を引きずる中、2001年にタクシン政権が誕生します。

タクシン政権は以下のような経済政策を行い人気を勝ち取りました。

  • 国内需要喚起
  • 外資誘致による輸出促進
  • 大規模公共事業
  • 社会保険制度改革
  • 麻薬撲滅

特に農村部や低所得者の支援を得ることに成功しました。

一方でトップダウンで独裁的な政治であったため、都市部のエリートや保守層の反発を招き、2006年ごろからタクシン首相を職権乱用と批判し始めます。同年4月の選挙は野党がボイコットして選挙が無効となり、反タクシン派の軍事クーデターが起こります。

タクシン派と反タクシン派の戦い

2006年9月に軍事クーデターが発生して10月に暫定政権が樹立されて選挙も行われます。その結果、タクシン派の国民の力党が勝利しますが、再び反タクシン派人民民主連合(PAD、通称黄シャツ)の運動が高まって街中を占拠します。

また、反タクシン派の司法クーデターが起こり国民の力党は解党処分されます。そして、2008年12月に最大野党の民主党のアシピット政権が樹立しますが、今度はタクシン派、反独裁民主戦線(UDD、通称赤シャツ)の反政府運動が発生します。

一旦はデモ運動が落ち着きますが、2010年2月に最高裁判所がタクシン元首相の資産没収を命じたことを契機にしてまたデモが加熱して日本人1名の死者を含む90名の死者を出す混乱につながりました。

 

そして、2011年月にタクシン派で、2008年に解党した国民の力党の後継政党であるタイ貢献党が勝利して、インラック政権が樹立されます。

ちなみにインラック氏タクシン元首相の娘です。

インラック政権からプラユット政権へ

インラック政権は安定した政権の舵取りをしていましたが、洪水対応や農業政策の失敗によって貧困層が増加して2013年に大規模な反政府デモが起こります。また、犯罪者の刑を減軽させる大赦法案を国会に提出したことによって多くの反発を招きました。

それから2014年に選挙が行われましたが、反政府デモ隊によって投票ができない事態になり選挙が無効になります。また、憲法裁判所はインラック首相を職権濫用と判断して失職させます。

そして、同年5月にプラユットが軍事クーデターを起こすのでした。

プラユット政権の現状

反タクシン派であるプラユット政権は2014年8月に成立し、2017年には新憲法を公布しました。また、2016年には数々の政府とデモ隊の衝突を仲介したラーマ9世(プミポン国王)の崩御を受けて、ワチラロンコン皇太子が新国王となります。

そして、2017年憲法のもとで、2019年に選挙を実施したところプラユット首相が再選します。

一方で、2017年の憲法がプラユット首相再選に有利だったことや、新国王のラーマ10世の素行が問題視されて批判されるなどタイの政治は揺れ動いています。

まとめ

今回はタイの政治についてご紹介しました。

タイの政治はクーデターも多いため日本人にとって理解が難しい部分もあります。

ぜひ、この記事を参考にしてみてください。

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