ウクライナ問題は第三次世界大戦を誘発すると言われています。
しかし、ウクライナ危機がどういったものか、詳細に理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回はロシアとウクライナの関係や、戦争直前に至る理由をなぜなのか簡単にわかりやすくご紹介します。
ウクライナ戦争はいつ終わる?
ウクライナ戦争は長期化する見通しが高いです。
なぜなら、ウクライナ側は今回の戦争だけではなく、2014年に奪われた領土まで取り返したいと思って戦う意志を明確にしているからです。一方のロシア側はウクライナの思いを受け入れることはできず、今回の戦争の成果を欲しています。また、戦争を長期化させてウクライナを疲弊させる狙いがあります。
そして、アメリカを含む西側諸国は「ロシアの敗北」で終わらせたいという想いもあり、支援を止めればウクライナの負けで戦争が終結しますが、支援を強化してウクライナに武器などを供与しています。また、中国もロシアを水面化で支えてなおかつ戦争を仲介するような立ち振る舞いをしており、戦争を早期に終結させようとはしていません。
戦争発生原因?ウクライナとロシアの関係をわかりやすく理解
ウクライナは元ソ連の領土であり、ソ連崩壊に伴って1992年に独立しました。
大まかにウクライナとロシアの関係を整理すると以下のようになります。
年代 | 大統領 | ロシアとの関係 |
---|---|---|
1990年代 | レオニード・クラフチュク(1991〜1994) レオニード・クチマ(1994〜1999) |
独立初期は脱ソ連を掲げた民族主義 クチマ政権では欧州とロシアに等間隔に接する |
2000年代 | レオニード・クチマ(1999〜2004、2期目) ヴィクトル・ユシチェンコ(2005〜2010) |
クチマ政権後期は独裁化によりロシア寄りに ユシチェンコは反ロを目指すが国政が不安定になる |
2010年代 | ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ(2010〜2014) オレクサンドル・トゥルチノフ(2014、代理) ペトロ・ポロシェンコ(2014〜2019) ウォロディミル・ゼレンスキー(2019〜) |
ヤヌコーヴィチ政権でロシア接近もクーデターで失脚 ポロシェンコ政権は反ロシア、欧米寄りに |
2020年代 | ウォロディミル・ゼレンスキー(2019〜) | ゼレンスキーがロシアとの関係改善を期待され当選 一方で親欧米外交も推し進めてウクライナ危機に |
ロシアに近づいたり離れたりしている歴史があります。
それでは5つの転換期を整理しながら詳しくみてみましょう。
①ロシアとの距離感が昔から課題だった
ウクライナが建国されてからはロシアに距離を取っていましたが、その後はロシア寄りになります。
2004年の大統領選挙では、選挙を通じて「欧米」か「ロシア」を選ぶ大混戦になり、ロシア寄りの大統領候補であるヤヌコーヴィチ(のちに大統領に)が当選します。
しかし、不正選挙だと主張するデモが起こり選挙がやり直しになって、ユシチェンコ政権が成立します。
これがオレンジ革命です。
②親ロ派のヤヌコーヴィチ政権崩壊でクリミア併合に
その後国政が混乱してしまい次の選挙では、ヤヌコーヴィチが勝利して2010年からロシア寄りになります。
ウクライナはEUと調印を行う予定でしたが、ヤヌコーヴィチはロシアに配慮してこれを見送ります。
そして、反政府デモにつながってヤヌコーヴィチは逃亡します。
ヤヌコーヴィチ政権が崩壊して、欧米寄りの政権ができることに反発したクリミアの住民が親欧米派と衝突します。
混乱状態にある中でロシア兵が入ってきて政府機関を占拠して人事をロシア寄りで固めます。
そして、2014年に住民投票が行われて、ウクライナからクリミアはロシアに併合されます。
そのため、ウクライナ戦争は2014年から始まっていたと考える人もいます。
③欧米に近づくも成果を残せない
それから親欧米・反露路線のポロシェンコ政権が2014年にできますが、EUやNATOに加盟することはできませんでした。
一方で、ポロシェンコ大統領の下では、ロシア文化の排除が進むなどウクライナの民族的なアイデンティティを強調するようになります。
その他にも以下のようなことが行われました。
- ロシアのSNS禁止
- 直行便の停止
ウクライナの東部や南部はロシアとのつながりも深く、こうした地域からの支持は下がります。
また、ウクライナ東部を中心に反政府組織も現れて、混乱の状態になっていました。
⑤欧米寄りでもロシア語を話すゼレンスキーの登場
2019年の大統領選挙に現れたのが、ゼレンスキーでした。
彼は親欧米的な政策を掲げながら、自身はウクライナの東部出身であり母語はロシア語です。
さらにロシア語で俳優業をやっていた上に、ポロシェンコ政権のように「ロシア文化を排除しない」と宣言しました。
このことから、ロシア南部や東部の支持を獲得して、大統領選挙に当選します。
ロシアとウクライナはウクライナ東部の衝突を巡って睨み合っていましたが、ゼレンスキー大統領は、ロシア側と捕虜を交換することに合意して一時期は緊張ムードが解けました。
しかし、衝突は止みませんでした。
ロシアがウクライナに侵攻する理由
NATOの東方拡大はロシアにとって恐怖
ロシアがウクライナに侵攻する理由はNATOの拡大を止めたいからです。
NATOはもともと、ソ連に対抗するために生まれました。
しかし、ソ連が崩壊してもNATOはヨーロッパから大きくなり、旧ソ連領土だった東欧各国も加盟しつつあります。
ロシア側から見ると、旧ソ連圏での影響力がなくなり、自分が敵対する軍事機構が自分の領土に近づいてくるのが恐怖なのです。
特に東欧にミサイルを配置されると、首をすぐ取られることになります。
プーチン大統領は「ロシアはアメリカのすぐそばにミサイルを配置していないのに、アメリカ側はロシアのすぐ側にミサイルを置こうとしている」と大批判したこともあります。
さらに、ロシア側はアメリカがNATOは東方に拡大しないと言ったが、約束を守っていないと主張しています。
ロシアにとってウクライナは共同体
ウクライナとロシアは民族的にも言語的にも非常に近いです。
元々ソ連で一緒だったこともありますが、今もウクライナにはロシア系住民が住んでいます。
また、2021年にプーチン大統領は「ロシア人とウクライナ人は一緒の人々だ」と述べています。
つまりロシア側の価値観的には、ロシアとウクライナは歴史的に結びつきがあって、全く別の国家ではなく通じるものがあると考えています。
このあたりは、中国が主張する台湾に似ていますね。
プーチン大統領は功績を残したい
2024年にロシアでは大統領選挙を控えていますが、それまでにプーチン大統領は実績を残したいと考えています。
具体的には、2012年から2018年の間の実績は「クリミア半島を手に入れたこと」でした。
それに代わるものを欲しているといった分析もあります。
ウクライナのNATO加盟を巡る各国の対応
NATOは2008年の首脳会合で、「ウクライナを将来的に加盟すること」に合意しています。
しかし、ウクライナ側はロシアとの関係もあって、行動を起こせませんでした。
2019年には、ウクライナは憲法を改正して将来的にEUとNATOの加盟を目指すことを明記しました。
その一方で、2019年に大統領になったゼレンスキー大統領は一度、ウクライナ東部の反政府組織と合意を結び停戦へと導きます。
しかし、2021年から停戦合意が守られず再び争いが起こるようになりました。
このタイミングで2021年にロシアもウクライナ国境付近にロシア軍隊を派遣して、現在のような混乱になっています。
ちなみに2021年4月に1度ロシアはウクライナ国境付近に軍隊を派遣していますが、この時は各国の批判を受けて手を引きます。
侵攻前のウクライナ情勢をわかりやすく
ウクライナ情勢は硬直状態です。
- ロシア
ウクライナ国境に10万人の軍隊を派遣 - ウクライナ
米軍と演習
市民も軍事演習
大統領は平静になるように呼びかけ - アメリカ
東欧に1万人規模の軍隊を派遣
ロシアへの経済制裁を主導予定 - NATO諸国
東欧に軍艦を派遣予定、足並みに疑問
ロシアが大規模な軍隊を国境付近に派遣したことによって、ウクライナはもちろんNATOや米軍はそれに見合った勢力の増強をしています。
しかし、米軍もNATOもウクライナへの直接の派遣は避けており、ロシアとの緊張をエスカレートしない狙いがあります。
また、ヨーロッパのNATO諸国では、ウクライナ問題へのコミットに温度差があります。
特にドイツなどは、エネルギーをロシアに依存しているので、ロシアに対して強く出られません。
一方で、アメリカは同盟国と共にロシアに対して経済制裁を行うことを掲げていますが、温度差があるのでどこまで足並みが揃うか不透明です。
ロシアの侵攻前に言われたこと
地面が凍る時に侵攻の可能性が高まる
ロシアがウクライナに侵攻するのは2月か3月だろうといわれています。
この時期には、路面が完全に凍結するので、ロシア軍の戦車や装甲車が走行するのが楽になります。
4月ごろには氷が溶けるので、装甲車が走れなくなります。
ただし、2月は北京オリンピックが行われているので、この期間は大人しくするだろうとも言われているので、その直後が危険です。
侵攻する意思はなく、交渉が目的という説もある
また、専門家の中には、そもそもウクライナに侵攻する可能性が低いと主張する人もいます。
東京大学先端科学技術研究センター専任講師 の小泉悠氏によれば、ロシアはウクライナに本気で侵攻する気はなく、アメリカやウクライナから譲歩を最終的に取り付けたい狙いです。
一番大きな譲歩がNATOの東方拡大阻止で、現実的にはウクライナがNATOとロシアに中立、あるいはロシア寄りの姿勢を維持することです。
ウクライナ侵攻時の日本の対応は?
日本は欧米と歩調を合わせて経済制裁に参加することになっています。
しかし、これにはメリットとデメリットがあります。
メリット
- 同盟国と連携を強化できる
- 西側諸国は強いと表明できる
デメリット
- 経済制裁でロシアと取引する日本企業が損失を受ける
- 北方領土の返還がさらに難しくなる
同盟国と強い関係を維持することで、力による現状変更は通じないというメッセージになります。
その一方で、日本企業が損失を受けたり、制裁に対するロシアの制裁で北方領土の返還がさらに難しくなるかもしれません。
ただし、ここで「日本から遠い地域の話」で終わらせてしまったら、次に台湾有事や尖閣有事が起きた時に、ヨーロッパ諸国が同じ理屈で傍観するかもしれません。
今回の日本の意思決定には非常に大きな意味があります。
まとめ
ロシアのウクライナ侵攻は日本にとって対岸の火事ではありません。
グローバル化が進む中、日本の対応が世界を変えてしまう可能性があります。
また、これからも平和が維持できるようにするためにも、しっかりと理解するべきです。
ぜひ、参考にしてみてください。
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