イギリスのEU離脱(Brexit)は大きなニュースになっています。
なぜ、イギリスはEUを離脱しようとしているのでしょうか。また、EU離脱のメリットやデメリットにはどういったものがあるのでしょうか。
簡単にわかりやすく説明します。
EU離脱とは?イギリスと欧州連合の岐路
EU離脱とは、イギリスが2016年に欧州連合(EU)を離脱したことを指します。
経緯
国民投票
2016年6月23日、イギリス国民による国民投票で、EU離脱派が52%という僅差で勝利しました。
これを受け、イギリス政府は正式にEU離脱手続きを開始しました。
離脱協定の批准
2019年1月23日、イギリスは欧州議会でEU離脱協定を批准し、同年1月31日にEUを正式に離脱しました。
しかし、離脱後の関係の詳細を定めた移行期間が設けられ、イギリスとEUは引き続き貿易やその他の問題について交渉を続けました。
移行期間の終了
2020年1月31日、移行期間が終了し、イギリスはEU単一市場と関税同盟からも離脱しました。これにより、EUとイギリスの間には新たな貿易障壁が生じ、両国の経済に大きな影響を与えました。
EU離脱の影響
イギリスへの影響
EU離脱は、イギリスとEU双方の政治、経済、社会に大きな影響を与えています。
経済
EU離脱によって、イギリス経済は大きな打撃を受けました。EUとの自由貿易がなくなったことで、輸出入が減少し、経済成長が鈍化しました。
政治
EU離脱は、イギリス国内の政治を大きく揺るがしました。離脱派と残留派の対立が深まり、政治的不安定化が懸念されています。
社会
EU離脱は、イギリス社会にも様々な影響を与えています。EU市民の権利が制限され、外国人労働者の流入が減少しました。また、EU離脱を巡る議論は、社会の分断を深めています。
EUへの影響
EU離脱は、イギリスとEU双方の政治、経済、社会に大きな影響を与えています。
経済
イギリスの離脱は、EU経済にも一定の影響を与えています。EU単一市場と関税同盟の規模が縮小し、EU全体の経済成長が鈍化しました。
政治
イギリスの離脱は、EUの政治にも影響を与えています。EUの結束力が弱まり、EU統合の進展が停滞する可能性が懸念されています。
社会
イギリスの離脱は、EU社会にも様々な影響を与えています。EU市民の権利が複雑化し、EU全体のアイデンティティが揺らいでいます。
今後の展望
EU離脱後のイギリスとEUの関係は、依然として不透明な状況にあります。
今後、両国は新たな貿易協定やその他の協定を締結していく必要があり、その過程で様々な課題が浮き彫りになることが予想されます。
また、EU離脱を受けて、イギリスはEUと違う存在感を作ろうと道を模索しています。
その代表なのが「グローバル・ブリテン構想」です。これはEU以外の世界各国との連携でイギリスの影響力を拡大させようというものです。
また、日本との影響も深まるでしょう。
イギリスは経済分野でTPPへの加入を正式申請して、軍事の分野では最新鋭の空母「クイーン・エリザベス」を日本海に派遣するなど日本と関係を深めており「日英同盟の復活」になるのかとも言われています。
なぜイギリスはEU離脱したのか
イギリスがEUを離脱した理由は以下の2つです。
- 移民の増加
- 漁場が他国に奪われる
順番に解説しましょう。
移民の増加
EU離脱の最大の理由になったのが、移民問題です。
EUの中は自由に人の移動が可能です。そのため、ポーランドなど東ヨーロッパから西ヨーロッパに出稼ぎにくる人々も増加しました。
そして、イギリスにも大量の出稼ぎ労働者が来て、彼らは低賃金で働くことからイギリス人の雇用を奪いつつありました。
さらに移民はイギリスの行政サービスを受けられるので彼らが税金を払って正当に行政サービスを利用していても、移民に対する不満が募っていました。
漁場が他国に奪われる
イギリスがEUに加盟していると、領海はまとめて同じです。
イギリス周辺では魚がたくさん採れるのですが、オランダやフランスの漁船がイギリス近くまで魚を採りに来ていました。
そのため、イギリスの漁業関係者からすると、漁場が奪われるといった不満があったのです。
イギリスのEU離脱の国民投票
イギリスでは2016年、デヴィッド・キャメロン首相のもとでEU離脱に関する国民投票を行いました。
キャメロン首相はイギリスをEUから離脱させるつもりはなく、国民投票をすれば「離脱したい」という声は少ないだろうと考えていました。
また、若い世代も「イギリスがEUから離脱することはない」と考えていたので投票に行きませんでした。
その結果、投票率は約72%でEU残留支持が48%、離脱支持が52%という僅差でEU離脱が決定しました。結果にびっくりした若者たちは、国民投票のやり直しを求めますが叶いませんでした。
ちなみに投票結果を見ても、年齢が高いほど離脱、年齢が低いほど残留に傾いています。
EU離脱のメリットをわかりやすく
EU離脱のメリットには以下のようなものがあります。
- 移民流入の抑制策が実行可能
- イギリスの漁業権が回復の兆し
- 独自の通商政策を実行可能
順番に解説します。
移民流入の抑制策が実行可能
安い労働力をイギリスが独自にコントロールすることができます。
EU離脱の争点となっていた不満点は解決する可能性が高いです。
イギリスの漁業権が回復の兆し
ひとまず、EU側の漁業権が今後5年半で25%減少すると言います。
また、毎年漁業量を協議することが決まっています。
独自の通商政策を実行可能
EUの決めたルールに合わせる必要がなく、独自の通商政策をとれます。
たとえば、日本とは「「日英包括的経済連携協定(EPA)」を結んでいます。
EU離脱のデメリットをわかりやすく
EU離脱のデメリットには以下のようなものがあります。
- 国境で通関手続きが復活
- 労働力不足になる可能性あり
- 金融マーケットの中心ではなくなる
順番に解説します。
国境で通関手続きが復活
EUから離脱すると通関手続きが発生します。
これまでは時間がかからずスムーズでしたが、書類審査や積荷検査などで時間や手間などがかかることになります。
労働力不足になる可能性あり
イギリスはすでに移民によって社会が支えられています。
たとえば、イギリスの新型コロナウイルス対策では、移民の看護師が大活躍していました。しかし、世論が移民反対だったので、彼らの活躍が評価されていません。
エッセンシャルワーカーから移民がいなくなると、イギリス社会が混乱してしまう可能性も指摘されています。
金融マーケットの中心ではなくなる
イギリスのロンドン「シティ」は世界金融の中心です。しかし、EU離脱で海外の金融機関はロンドンに支店を置いても、EUと規制のない金融取引ができません。そのため、金融都市としての価値が低下します。
一方、イギリスの銀行免許があればヨーロッパのどこでも銀行業務ができました。しかし、イギリスの免許では今後、EU内では通用しなくなるため、ドイツのフランクフルトなどに活動拠点を移す金融機関も出てきています。
金融都市としての価値低下をきっかけにイギリス経済の低下にもつながりかねません。
EUを離脱した国は他にもある
EU(前身の団体を含む)を離脱した国は、イギリス以外にも以下のような国があります。
- フランス領アルジェリア
1962年に独立が理由で脱退 - グリーンランド
1985年に住民投票の結果を受けて脱退 - サンバルテルミー
2012年に現地とフランスの意向を汲んで欧州理事会で決定
まとめ
今回はイギリスのEU離脱に関してご紹介しました。
イギリスのEU離脱は移民が大きな原因でしたが、メリットもデメリットもあります。
これからの新しいイギリスがどうなるのか、国際社会も注目しています。
ぜひ、参考にしてみてください。
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