今回は台湾の有名企業についてご紹介します。
台湾の主力産業は何で、よく聞くTSMCや鴻海(ホンハイ)、台湾経済を支えている台塑石化股分有限公司はどういった企業なのでしょうか。
詳しく解説します。
台湾の産業構造の特徴
みずほ銀行が発表したデータによると、台湾の産業構造はこのようになっています。
およそ、62%がサービス業、36%が工業、2%が農業になっています。大半はサービス業であり卸小売、不動産、金融が主力です。
一方の工業は製造業がほとんどを占めています。
さらに、台湾企業の時価総額で見てみると、多くが工業からランクインしていて、台湾の経済を支えているのは製造業ということになります。
台湾の有名企業
順位 | 企業名称 | 業種 | 時価総額(億元) |
1 | 台灣積體電路(TSMC) | 製造(半導体) | 68,975 |
2 | 鴻海精密工業(ホンハイ) | 製造(電気) | 12,172 |
3 | 台塑石化(フォルモサペトロケミカル) | 製造(石油) | 10,860 |
4 | 中華電信 | 通信 | 8,533 |
5 | 台灣塑膠工業(台湾プラスチック) | 製造(プラ) | 6,903 |
6 | 台灣化學纖維 | 製造(化学) | 6,389 |
7 | 南亞塑膠工業(南亜プラスチック) | 製造(プラ) | 6,146 |
8 | 國泰金融控股(キャセイユナイテッド) | 金融 | 5,572 |
9 | 富邦金融控股(富邦金融) | 金融 | 4,631 |
10 | 聯發科技(メディアテック) | 製造(半導体) | 4,604 |
蘋果日報によると、こちらが2019年の台湾企業の時価総額ランキングです。トップ3はTSMC、鴻海(ホンハイ)、台塑石化(フォルモサペトロケミカル)が続きます。
これらは全て製造業の企業です。さらに言えば、4番目に通信業者である中華電信が登場しますが、トップ10のうち7つの企業が製造業です。
TSMCとは
TSMCは台湾の新竹に本社を置く半導体の企業です。時価総額は日本円に変換すると、約21億円で日本のトヨタ自動車と同じ規模でした。
現在ではさらに大きくなっています。会社の設立は1987年ですが、2002年には世界半導体生産でトップ10に入り、2014年にはトップ3に入りました。
現在では半導体市場の55%を獲得している世界的な大企業です。
TSMCのすごさと強み
TSMCはこれだけの大企業にもかかわらず、一般的に名前を知られていません。これはトヨタのように自社の製品を売って有名になったのではなく、下請けをして大きくなったからです。実はiPhoneやiPad、そして他の有名なIT企業から半導体の製造を請け負って成長してきました。
世の中に溢れているスマートフォンなどの精密機械は半導体という部品が必須なのですが、この一番大切なコア部分である半導体を作っているのがTSMCなのですね。
同じような企業にIntelというアメリカの会社がありますが、TSMCの方が技術力が1年から2年先まで行っているとも言われています。ちなみにIntelは半導体の設計と製造を行っていますが、TSMCは製造に特化しています。
製造に特化しているからこそ、自らの企業のビジネスのために自社設計の半導体を作るApple、Qualcommなどの半導体製造を請け負い発展してきました。
Apple製品は自社CPUのApple Siliconが有名です。また、QualcommはAndroidスマートフォン向けチップでとしてよく採用されています。
また、TSMCは先端パッケージや特別な装置にも本気で、膨大な研究費を投じています。そして、TSMCは新たに日本の茨城県つくば市に開発拠点を作ることを2021年に発表しました。
TSMCとホンハイの違い
“TSMCとホンハイ”は、台湾を代表するハイテク企業ですが、事業内容やビジネスモデルが大きく異なります。
項目 | TSMC | ホンハイ |
---|---|---|
事業内容 | ファウンドリー(半導体受託製造) | 受託製造サービス(EMS) |
主な製品 | 半導体 | 電子機器(スマートフォン、パソコンなど) |
ビジネスモデル | 自社設計以外の半導体を製造 | 顧客の設計に基づいて電子機器を製造 |
強み | 技術力、生産能力 | コスト競争力、グローバルな生産拠点 |
規模 | 売上高約5兆台湾ドル、従業員約52万人(2023年) | 売上高約6兆台湾ドル、従業員約80万人(2023年) |
事業内容の違い
TSMCは、世界最大手のファウンドリー企業であり、自社設計の半導体ではなく、他の企業から設計を受託して製造しています。スマートフォンやパソコンなど、あらゆる電子機器に搭載される半導体を手掛けており、高い技術力と生産能力で世界中から信頼されています。
一方、ホンハイは、受託製造サービス(EMS)世界最大手の企業であり、Apple社のiPhoneをはじめ、様々な電子機器の組み立てを請け負っています。設計から製造まで一貫して行うTSMCとは異なり、顧客から提供された設計に基づいて製造を行っています。
近年は、半導体製造にも参入しており、TSMCと競合する関係にあります。
主な製品の違い
TSMCの主な製品は半導体であり、これらはスマートフォン、パソコン、データセンターなど様々な分野で利用されています。特に、5GやAIの発展に伴い、TSMCの半導体はますます重要な役割を果たしています。
ホンハイの主な製品は、電子機器そのものであり、スマートフォン、パソコン、テレビなどが含まれます。ホンハイはApple社の主要なサプライヤーであり、iPhoneの組み立てで特に知られています。
ビジネスモデルの違い
TSMCは、自社設計以外の半導体を製造するファウンドリーモデルを採用しています。このモデルでは、顧客企業が設計した半導体を製造し、提供することに特化しています。これにより、TSMCは多様な顧客基盤を持ち、高度な技術力で市場のニーズに対応しています。
ホンハイのビジネスモデルは、顧客の設計に基づいて電子機器を製造するEMS(受託製造サービス)です。このモデルでは、設計から製造まで一貫して行うのではなく、顧客の設計図に従って製造を行います。これにより、コスト競争力と生産効率を高めています。
強みの違い
TSMCの強みは、その高い技術力と生産能力です。TSMCは、最先端の半導体製造技術を持ち、常に技術革新を続けています。これにより、スマートフォンやデータセンターなど多くの分野で高性能な半導体を提供しています。
ホンハイの強みは、コスト競争力とグローバルな生産拠点です。ホンハイは、世界中に生産拠点を持ち、大規模な生産能力を誇ります。これにより、顧客のニーズに迅速に対応し、コストを抑えた製造を実現しています。
規模の違い
TSMCの売上高は約5兆台湾ドル、従業員は約52万人(2023年)です。
これに対して、ホンハイの売上高は約6兆台湾ドル、従業員は約80万人(2023年)です。ホンハイの方が売上高と従業員数で上回っていますが、TSMCの技術力と生産能力は非常に高く評価されています。
ホンハイとは
鴻海精密工業(ホンハイせいみつこうぎょう)は鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ、Foxconn/富士康)の中のひとつの企業です。
鴻海精密工業はスマートフォンや薄型テレビを受託生産していますが、鴻海科技集団は以前、シャープを買収したことで有名になりました。その他にもAppleのiPhoneを受託生産しています。
会社の設立は1974年で当初は「鴻海プラスチック工業」という名前で、白黒テレビの「つまみ」の部分の製造していました。1980年代にアメリカと中国に進出して、その後成長を繰り返して2018年には、企業ランキングである「フォーチュン・グローバル500」の第24位に輝きました。
郭台銘という男
鴻海精密工業といえば、台湾一の総資産額を誇る創業者の郭台銘(テリーゴウ)にも大きな注目が集まります。白黒テレビのつまみを製造していた小さな企業から、シャープを代表するくらいの世界的有名な企業に成長させたビジネスセンスは天才的です。
シャープを買収する目的は、シャープの液晶技術をiPhoneのディスプレイに供給することや、自動車にディスプレイを搭載することでした。また、インドでの製造と販売を見据え、そこにメリットを感じて買収に至りました。
ちなみに、郭台銘は1日16時間ほど働く徹底的な仕事ぶりで、同僚や部下に対しても厳しい人物としても知られています。
郭台銘は自分のビジネスを展開する中で台湾だけではなく、中国やアメリカにも進出しました。そのパイプもあって、2020年の総統選挙のために中国国民党の予備選挙に出馬する意向を固めました。
中国ともアメリカとも上手に交渉ができるというのが強みだったのですが、予備選挙で韓国瑜(かんこくゆ)に敗れました。今後、郭台銘がどのように台湾社会に関して関わるのか注目が集まっています。
台塑石化股分有限公司
台塑石化股分有限公司(フォルモサ・ペトロケミカル)は、ガソリンやディーゼル、ジェット燃料など基本的な燃料を取り扱っています。
2016年には、アメリカに天然ガスに含まれるエタンを原料に使って、エチレンなどの化学材料を生産する装置であるエタンクラッカーを建設するため、1兆円以上の投資を行いました。
また、台塑石化股分有限公司は台湾プラスチックグループの傘下でもあります。
台湾プラスチックグループとは
台湾プラスチックグループは、合成樹脂から電子部品、製鉄まで手掛ける大きな会社です。1954年に台湾の高雄市で設立された歴史もある会社で、王永慶(おうえいけい)が兄弟とともに設立しました。王永慶の生まれは1917年だったので日本統治時代に生まれたことになります。
当時台湾政府がプラスチック業の奨励策に乗り出したことを受けて、会社を設立させて2007年には世界一長寿番付で世界第8位となりましたが、2008年に90歳で亡くなってしまいます。
その後も「台湾の松下幸之助」と呼ばれるほど尊敬され続けています。
台湾プラスチックグループは特に、ガラス繊維の生産能力世界1位、ポリエステル原料に使われるテレフタル酸の年間生産量世界1位になるなど繊維分野で大きな実力を発揮しています。
まとめ
今回は台湾の有名企業についてご紹介しました。台湾は製造業に強く、世界トップクラスの企業も存在します。
ぜひ、この記事を参考にしてみてください。