シンガポールは東南アジアに位置する都市国家です。
そのシンガポールはどのように経済発展して豊かになり、どういった経済的な特徴があるのでしょうか。
また、今後のシンガポール経済はどのようになるのでしょうか。
簡単にわかりやすく解説します。
シンガポールはなぜ発展して豊かになった?
シンガポールは強い政府のリーダーシップのもとで、経済成長に結びつくような政策を行なったことで発展しました。
まず政府が道路や電力など基本的なインフラを整備した上で、税制の優遇措置で外資を呼び込み外国の基本と技術を使った工場を建てました。そして、シンガポール国民を労働力として働かせて、できあがった製品を海外に輸出して大きく発展しました。
これは小国だからこそできた政策であり、国家主導型開発で経済成長を遂げた結果、都市国家になったのです。
シンガポールが先進国と栄えている感があって、一人当たりのGDPが高くて豊かな理由も突き詰めればこのような歴史があったのです。
シンガポールの簡単な経済史
1950年代のシンガポールは失業率が10%を越えるスラム街でしたが、政権を握った人民行動党は工業製品を輸入するのではなく、工場をシンガポールに呼び込み工業製品を作らせるようにします。特に造船と石油精製に力を入れていました。
その後、電気や電子部品を加工して輸出することによって、1960年代後半から高度経済成長が起こります。結果として失業率は改善しましたが、今度は労働力不足になります。また、労働力のコストが向上してきたため、金融や情報などに産業構造をシフトします。
それからのシンガポールは今日のように発展しますが、途中2001年にITバブル崩壊、2003年のSARS、2008年にリーマンショックを経験しますが、生産性を向上して質のよいものを生み出す付加価値経済化しながら発展して来ました。
シンガポール経済の特徴
シンガポール経済はサービス産業と製造業が基盤となっており、それに加えて情報や金融といった産業が盛んです。
また、シンガポールの経済を経済政策を通して分析すると、特徴が3つあります。
- 外資の呼び込み
- エリート人材の育成
- 政府関連企業の牽引
外資の呼び込み
シンガポールは外資の技術や資本を使って発展して来ました。現在でも、シンガポールの国家運営に関わるようなビジネス以外ならどのような企業でも税制面等を含めて積極的にシンガポール進出しやすい条件が整っています。
また、外国人であっても少ない資本金で機業が可能です。
ちなみに、シンガポールにお金持ちが多いのは、富裕層に対して課税が低かったり、贈与税や相続税がないので資産が受け継ぎやすかったりするのが理由のひとつです。
エリート人材の育成
シンガポールでは幼少期から高給を狙えるようなエリート教育が進んでいます。生まれながらにして中国語と英語がネイティブレベルに喋れる上に、世界トップクラスの読解力や数学、科学的知識を獲得します。
そして、アジア大学ランキングではシンガポール国立大学が1位になるなど教育制度が充実しており、知識や思考力が必要な付加価値経済にぴったりな人材を排出しています。
政府関連企業の牽引
シンガポールには政府関連系の企業(GLC)があります。いわゆる国営企業のように、政府によってコントロールされながら経営が行われています。具体的にはシンガポール航空や通信会社のSingTelなどが存在します。
また、優秀な人材が政府関連企業に就職して働いています。
シンガポール経済の強みと弱み
シンガポール経済の強み
シンガポールは東南アジアの中でもインフラ開発が進んでおり、法制度もしっかりしており治安も良好です。また、教育水準が高くて自然災害などが少ないことが経済活動を行う上での大きな強みとなっています。
シンガポール経済の弱み
シンガポールは国土面積が小さくてエネルギーや食料を他国から依存しているため、関連企業のリスクがあります。また、労働力と住居が不足しており、人口の高齢化も問題となっています。
そして、主にメディア系の企業においては、シンガポール政府に対する批判の弾圧や検閲など表現の自由に制限があるのがシンガポールビジネスのリスクです。
シンガポール経済の成長率推移と今後の見通し
シンガポールの経済成長率の推移
シンガポールの経済成長率の推移はこのようになっています。
現状として、2019年は1.35%、2020年は-5.39%の成長率でした。
シンガポールの経済の今後の見通し
シンガポールは2020年に流行した新型コロナウイルスの影響で経済的なダメージを受けました。
しかしながら、2021年には4~5%台に回復する見込みです。貿易活動の再開や観光業が再活発化することが理由としてあげられています。
シンガポールの経済の課題
シンガポールの経済の問題点は、労働者の高齢化や外国人労働者の受け入れなど、どの国でもあるような問題が多いです。しかし、シンガポールで特に問題視されているのは格差問題です。
多民族で多宗教国家であるシンガポールは、民族や言語の違いによって教育の差が生まれそれが就労の時点でも貧困層とエリート層でくっきりと分かれています。
高級なランボルギーニが走る横で、月収10万円以下の低所得者層が20%もいると言われています。そのような人は清掃員や工事現場などの肉体労働を行う一方で、生活費の高さや社会保障が不十分なため自己負担を負うといった問題に苦しんでいます。
シンガポールにおけるカジノの経済効果
カジノはシンガポールに以下のような経済効果をもたらしました。
- 税収の増加
- 雇用の創出
- 観光客の増加
税収の増加
カジノによって1年間におよそ1600億円ほどの税収を得ており、これはシンガポールの税収の25%ほどになります。そのため、かなりの財源確保につながったと言われています。
雇用の創出
カジノ施設がオープンすることによって、関連する施設の従業員やディーラー、利用者のホテル従業員などの雇用を生み出すことができました。
いわゆる超富裕層にとってはあまり魅力的な職業ではありませんが、現在貧困下にいる層にとっては働ける環境ができたと言えるでしょう。
観光客の増加
カジノは海外から観光客を増やす要因の一つになりました。
特に中国からの観光客が多いことに加えて、マレーシアやインドネシアの観光客がカジノ目的でシンガポールに訪問してくるといった効果があります。
まとめ
今回はシンガポールの経済についてご紹介しました。
シンガポールの経済はサービス産業と製造業がメインで発展してきました。
政府主導で経済政策を行い大成功したのですが、その裏には格差問題も存在します。
そんなシンガポールの経済についてしっかりと認識して、理解を深めましょう。