今回は2020年に施行された香港の国家安全法について解説します。
テレビやニュースなどでもこの国家安全法(国安法)についてよく取り上げられますが一体何が問題なのでしょうか。また、日本人への影響はあるのでしょうか。
詳しくみてみましょう。
国家安全法とは? 簡単な説明
国家安全法は、正式名称では「中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法」と言って、2020年6月30日に施行されました。国家安全法や香港国家安全法と表現するのは日本のメディアの呼び方です。
全文は6章の65条まで行ってかなり長いものであり、中国政府が行政、立法、司法の分野で影響力を強める狙いがあります。国家安全法の内容は、 「国家安全法案に絡む事件を審理する裁判官は間接的に中国政府が任命できる」などが含まれますが、1番の懸念点はテロリストなどを簡単に取り締まれるようになったことです。
テロリストを簡単に取り締まることができるのはよいことだと思うかもしれませんが、実はデモを行っている香港の人々たちからすると恐怖でしかなく、デモや集会を開くと逮捕されてしまいます。
国家安全法の問題点
香港の人たちから見た問題点を深掘りすると、以下の行為が国家安全法では禁止されています。
- 国家の分裂誘導
- 政権の転覆への誘導
- テロ行為
- 外国勢力と結託すること
ここで注意したいのが、この4つがとても曖昧な定義で決められていることです。何が大丈夫で何がダメなどがはっきりとしていません。そのため、中国政府が自分の解釈で法律をコントロールできるようになっているのです。 もしかしたら、犯罪をでっち上げられる可能性があります。
そして、もしもこの法律を破ってしまった場合は、先ほども少し記述しましたが、国家安全に関連する事件を審理する裁判官は香港のトップである行政長官が指名可能であり、外国籍の裁判官が多い香港が一変して中国よりの判決になると言われています。
ちなみに、中国がなぜ国家安全法を制定したのかと言うと、本格的に香港を統治したくて、デモ隊などを弾圧する狙いがあるからです。
海外の反応は?
アメリカは「香港自治法」を成立
どの国も国家安全法に対して懸念を抱いています。アメリカは香港の国家安全法の施行を受けて 「香港自治法」を成立させました。これは香港の自治を侵害したとされる個人や団体、金融機関などに対して制裁を科すのが可能な法律です。
より一層米中対立が深刻化する引き金になりました。
イギリスは香港人に特別ビザ発行
また、注目されるのがイギリスです。イギリスはもともと香港を1997年まで統治していました。そのこともあって、香港市民300人に対してイギリスの市民権や永住権の申請を可能にする政策をとりました。
具体的には、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民が所持可能な「イギリス海外市民(BNO)パスポート」の保持者と、その扶養家族がイギリスの特別査証(ビザ)を申請できます。1997年以降に生まれた子どもはNGですが、条件付きで申請可能です。
米英、どちらの対応に関しても中国政府は反発しています。
台湾は強い懸念
台湾と中国は仲が悪く、台湾はいつか中国の支配を受けるのかもしれないと怯えています。 台湾人は「今日の香港が、明日の台湾にならないか」と懸念を抱いているのです。
また、台湾は香港国家安全法の成立を受けて、香港居住者が台湾に移住を容易にするための窓口を開設して、香港からの人材を実質的に受け入れました。
そして、2020年には台湾の総選挙がありましたが、総選挙前までは経済不振により蔡英文総統の支持率が落ち込んでいました。しかし、香港の状況を見て中国に対して強硬策をとる蔡英文の支持率が一気に回復して歴史的大勝利になりました。
日本への影響は?日本人は逮捕される?
日本企業の影響
2017年6月時点で香港に進出している日本企業はおよそ1400社あり、香港と日本の経済的な結びつきはとても深いものでした。 しかしながら、国家安全法の成立後、日本貿易更新機構が2020年に日本企業296社に対して実施した調査では、およそ35%が撤退や見直しを検討していると回答していました。
日本人の影響
国家安全法は外国人に対しても適応されるので、日本人も逮捕されます。
香港国家安全維持法の第38条には、「香港特別行政区の永住権を有しない者が、香港特別行政区外で、 香港特別行政区に対して、本法が規定した犯罪を実施した場合、本法を適用する。」と明記されています。
つまり、香港にいなくても国家安全法に背くような行為をした場合、逮捕するというのです。まさに世界の警察という感じですが、警察は基本的に国境を超えて逮捕を行うことができないので、日本にいる限りは安心です。
しかしその一方で、中国に旅行に行った場合や香港で飛行機のトランジットを行った時に拘束されるという恐れは十分にあります。
まとめ
香港の国家安全法についてご説明しました。ポイントは、中国が香港を強めるための法律であり、日本人でも国家分裂を煽る勢力として逮捕される可能性があります。
もし、香港に今後旅行に行くときは注意したいですね。
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