今回は台湾の政治体制について説明します。
台湾にはどういった政治政党があって、台湾の政治的な強みは何でしょうか。また、現在の台湾政治を巡る情勢はどうなっているのでしょうか。
わかりやすく解説します。
台湾の政治体制について
台湾は民主主義
台湾は、厳密には国として日本は認めていませんが中華民国という名前の民主主義国家です。民族独立、民権伸長、民生安定の三民主義、行政、立法、監察、司法、考試の五権分立を守っています。
中華民国の歴史を簡単におさらい
台湾は現在では民主主義国家となっていますが、昔は独裁政治だったのです。ここに至るまで長い歴史があって、中華民国という名前は中国大陸の歴史までさかのぼります。1912年に孫文(そんぶん)が辛亥革命を起こして中華民国を樹立します。
その後、孫文は1919年に中国国民党を立ち上げましたが、彼は亡くなり中国国民党はライバルであった政党、中国共産党に中国から追い出されます。そして、中国国民党が逃げ込んだのが日本が統治していた台湾でした。日本の敗戦後、1945年10月に台湾に攻め込みます。
そして、中国国民党は蒋介石(しょうかいせき)という人物をトップにして、1949年に台北を臨時首都とした国造りを開始します。
その後、台湾はずっと長い間独裁が続きますが、1996年に李登輝(りとうき)という人物がトップを選ぶ総統直接選挙を初めて実施して、以降、台湾は4年に1度総選挙が繰り返される民主主義国家として道を歩んでいます。
ちなみに、中華民国は中国国民党が用いた名称なので、国名を台湾に見直す動きも出ています。
このあたりはとても複雑な問題ですが、簡単に言えば「中華民国」という呼び方は中国大陸にルーツがある一方で、「台湾」は中国大陸とは関係なくひとつの独立した国という意味を込めた呼び方です。
台湾の選挙について簡単理解
1988年、蒋介石の後を継いだ蒋経国が死亡します。李登輝はそのとき、副総統だったので繰り上げで総統になります。そして、1990年に間接選挙(国民大会が正副総統を選出し、任期は6年間)であった中華民国総統選挙で李登輝は再当選します。
そして、1994年に李登輝は民主化を推し進めて、「1期4年・連続2期」の制限を設けた直接選挙を行うように憲法改正します。
1996年から直接選挙の中華民国総統が始まります。被選挙権は40歳以上の中華民国国民で、総統と副総統候補の両方がペアで立候補します。2004年からは海外在住の国民に対しても選挙権があり、期日前投票はないので、選挙当日に戸籍地で投票しなければなりません。
ちなみに、4年に1回の年のタイミングはアメリカの大統領選と一緒です。これは、アメリカの東アジアに対する政策に関して歩調を合わせやすくするためです。
台湾の政党
台湾には2018年2月末時点で337の政党があります。その中でも知名度と影響力を持っている政党を紹介します。
民主進歩党
まず、民主進歩党です。通称、民進党とも言われます。簡単に言うと、中国に対しては敵対して強く出る一方で、同性婚などに関しては非常に多様な価値観を持った政党です。2020年の総選挙では民進党のトップである蔡英文(さいえいぶん)が勝利しました。
中国国民党
中国国民党は、孫文や蒋介石がいた政党です。通称、国民党と呼ばれています。民進党とは異なり、中国に対しては比較的優しく経済的な結びつきを強めようという考えを持っています。その一方で価値観的には保守的で同性婚などには否定的です。
台湾民衆党
台湾民衆党は台湾政治の第三勢力と呼ばれています。2019年8月6日に台北市長の柯文哲(かぶんてつ)によって結成されました。民進党と国民党の二択に疲れた市民の心を捉え、親中親米のスタンスを取っています。主に中間層の若者に支持されています。
時代力量
時代力量(じだいりきりょう)は2014年に台湾で起こったひまわり学生運動のリーダーが2015年1月25日に設立した政党です。
今までの政治にうんざりした若者を上手く取り組みましたが、一方で設立したリーダーは離党したり、党内でも思想性で意見が分かれたりするなどかつての勢いがあまりなくなっています。
台湾基進
台湾基進(たいわんきしん)は民進党に協力的な政党です。勢力としては小さいですが、政治思想はリベラルであり、中国とは距離を置いて台湾人としての価値観を大切にしています。
台湾にある多様性という強み
女性の政治家が多い
台湾は日本よりも多様性という分野では進んでいます。国のトップである総統は2016年から蔡英文という女性リーダーが努めています。
また、台湾の政治家自体、女性が多いのです。2000年代に政治家の2割は女性でしたが、2008年には3割、2020年には40%を超えました。
この背景にはジェンダークオータ制度という、政治家の女性比率を高める制度が設計されているからです。ちなみに、国政選挙の場合、憲法には「比例代表選挙で獲得した議席のうち、女性の占める割合を50%以下にしてはいけない」と書かれています。
ちないに1946年に中華民国が定めた憲法はすでに女性の議席確保が重要視されていて、1950年代から1980年代までに女性のために5%から10%の議席が確保されていました。
トランスジェンダーもいる!
トランスジェンダーとは、自認する性別と体の性別が異なる人です。たとえば、男の体で生まれて、自分は女性だと信じている人などがいます。台湾は性的マイノリティの方でも誇らしげに生きることができる文化が根付いています。
今までトランスジェンダーを公表した台湾の政治家で有名なのは、オードリー・タン(唐鳳)です。
オードリー・タンは最年少でIT担当大臣に任命されて、2020年に発生した新型コロナウイルス問題では、マスクの在庫マップを作成するなど他の国家ができなかったような驚異的な政策を実行して一躍有名になりました。
オードリー・タンは24歳の時にトランスジェンダーであることをブログで告白して、英語名で「オードリー」を名乗るようになりました。「オードリー」は男女共に使えてニュートラルな名前だと気に入っているといいます。
台湾の政治情勢!課題は何?
中国との距離感と経済問題の両立
台湾の経済を支えているのは半導体や液晶等の電子部品です。あまり一般には知られていませんが、 台湾のTSMCは世界一の半導体企業で、この企業を中心にアップルなど有名な企業も動いています。
また台湾の名目GDPを見ると、輸出が全体の7割を支えています。特に台湾は電子部品は海外に輸出して利益を得ており、その相手国のトップが中国つまり、中華人民共和国です。台湾の輸出先の相手の40%程が中国に依存している計算です。
その一方で、中国とは政治問題を抱えています。中国は台湾を取り込みたいと考えていて、台湾は中国の一部になりたいと思っていません。そしてもし、台湾が少しでも独立運動など中国に対して挑発的な行動をとると、報復措置として中国が経済的な制裁を強めてきます。
その結果、中国に依存する台湾経済は痛手を被ります。 たとえば、2019年には中国人が台湾に個人旅行に行くのを禁止して、台湾の観光業は打撃を受けました。
このような制裁を受ける可能性もあるので、台湾は自国の経済を守りながら中国とも上手く立ち回る難しいかじ取りを迫られているのです。
まとめ
今回は台湾の政治体制についてご紹介しました。日本と同じ民主主義ですが、調べてみると女性の議員も多くて多様性という点では日本よりも進んでいます。また、中国との問題は日本よりも深刻です。
ぜひ、この記事を参考にしてみてください。