中国は日本に近くて、人々の交流も盛んです。
しかしながら、政治体制が異なっているということを聞いたことはありませんか。
そこで今回は中国の政治について簡単にわかりやすく説明します。
中国の政治の仕組みを簡単に理解
中国の政治体制をわかりやすく理解
中国は日本やアメリカと異なり、一党独裁体制です。中国共産党という政治政党があって単独で中国全土を統治しています。
日本では、自由民主党という政治政党があって国を統治していますが、それ以外に力を持った他の政党が存在します。しかし、中国では中国共産党は中国を指導する立場にあります。
そして、国家主席や国務院総理は全国人民代表大会で決められますが、全国人民代表大会はざっくりと説明すると図表のようにピラミッド型になっていて、選ばれた人たちが参加します。
中国のトップは誰?
中華人民共和国のトップは中国共産党の国家主席であり、2013年3月14日から習近平(しゅうきんぺい)という人物がポストについています。任期は5年で2期10年まででしたが、2018年の憲法改正によって制限がなくなり終身制になりました。
歴代の国家主席は以下の通りです。一時期、国家主席が不在だった時代もありました。また、国家主席は中華人民共和国のトップ、中国共産党のトップ、人民解放軍のトップを兼ね備えています。
代数 | 名前 | 任期 |
---|---|---|
1 | 毛沢東 | 1949年10月1日〜1959年4月27日 |
2 | 劉少奇 | 1959年4月27日〜1968年10月31日 |
3 | 李先念 | 1983年6月18日〜1988年4月8日 |
4 | 楊尚昆 | 1988年4月8日〜1993年3月27日 |
5 | 江沢民 | 1993年3月27日〜2003年3月15日 |
6 | 胡錦濤 | 2003年3月15日〜2013年3月14日 |
7 | 習近平 | 2013年3月14日〜 |
中国共産党中央政治局常務委員会(政治局委員)とは?
全国人民代表大会とは、中国の憲法で最高権力機関定められており、全国の省や市、軍などから選ばれた3000人で開かれ、任期は5年間です。また、年に1回ほど北京で開かれて憲法改正や法律の制定、予算の審議などが行われます。
また、それとは別に中国共産党全国代表大会という、中国共産党の指導体制と、これからの方針を決定する機関があります。そして、中国共産党全国代表大会で、さらに上のレベルの中国共産党の最高指導機関である党中央委員会のメンバーを選びます。
中国共産党全国代表大会の人数は2,000人程度ですが、党中央委員会は200人程度です。
そして、党中央委員会が中央政治局、中央政治局常務委員会(常務委員)、共産党のトップである総書記を選びます。特に中央政治局常務委員会は権力の大きい最高指導部であり、2021年現在では7人いて、チャイナセブンとも呼ばれています。
メンバーは以下の通りです。
- 張高麗
- 王岐山
- 劉雲山
- 兪正声
- 張徳江
- 李克強
- 習近平
この7人の中から党のトップである総書記が選ばれるため、政治権力闘争の舞台となっています。
中国の政治の仕組みを知るおすすめの本は?
慶応義塾大学出版から発売されている「よくわかる現代中国政治」がおすすめです。この本は入門書となっており、中国国内の政治から外交まで基本的な情報が網羅されています。
また、編者の川島真と小嶋華津子はそれぞれ東大と慶應の教授であり、中国研究の第一人者でもあります。
ひとまず、こちらの本から読み進めてみてはいかがでしょうか。
中国の政治家に理系が多い理由
中国の政治家は一昔前、理系が多かったのです。しかし、その後、法学などが重視されるようになってそれにふさわしい文系の政治家が数多くなりました。では、なぜ昔は理系の政治家が多かったのかというと、文化大革命のせいでした。
文化大革命では、文系の学生たちが多く巻き込まれて命を落としました。しかし、理系の学生は無縁だったため、必然的に理系のリーダーが生まれました。
中国の政治家のなり方を簡単に理解
中岡まりの「中国における人民代表大会制度の概要と歴史」にとると、中国の国会にあたる全国人民代表大会に出席する人々はほとんどが他の職業との兼任であり、いわゆる「政治家」ではありません。
こちらは先ほどご紹介した全国人民代表大会に関する図です。
中国には日本の都道府県や市町村のように町の規模によって名前が分けられています。
- 国家
- 直轄市・省
- 区がある大きな市
- 小さな市
- 鎮・郷
①、②、③が間接選挙で選ばれ、④と⑤は直接選挙です。また、ひとつ下のレベルの都市が上のレベルの都市の代表を選びます。
そのため、国会議員つまり日本で言う政治家になって国会に出る場合は、これほどの選挙を勝ち抜かなければなりません。つまり、最初に直接選挙で選ばれた人が純粋に国会議員のように全国人民代表大会に出席できることは難しいのです。
中国の政治の歴史を簡単に理解
中国は建国してから100年未満ですが、大きく分けて以下の3つの転換期があります。
- 中華人民共和国の建国と毛沢東の統治
- 鄧小平の改革・開放宣言で転換期へ
- GDP世界2位の大国になった中国
それぞれ見てみましょう。
中華人民共和国の建国と毛沢東の統治
1949年に毛沢東は中華人民共和国を建国します。毛沢東の理想つまり、毛沢東思想はマルクスとレーニンが確立した社会主義や共産主義の考え方をベースにして、中国なりの社会主義、共産主義を作り出そうというものです。
社会主義は発展した資本主義から生まれるものですが、建国時の中国は今よりも貧しい国でした。そこで、毛沢東は以下のような姿勢で中国を共産主義にすることに決めました。
- 中国の人口の大部分を占める農村を軸にして今後の方針を決める(大衆路線)
- 現場や現実から学び、筋の通った説明や考えを導く(実事求是)
- 農村から着手して、最後に都市部に手をつける(人民戦争理論)
農村を第一に考えているのがわかりますね。この考えのもとに、毛沢東は計画経済を行い、社会主義を普及させようとしていました。中国を農業国から工業国にしようとして成功し、1958年に大躍進政策を行います。
大躍進政策とは
大躍進政策は簡単に言うと、鉄鋼などの生産の増強を掲げて、工業は外国に頼らないで中国の力だけで発展しようというものでした。さらに、溶鉱炉(ようこうろ)を数多く作らせて鉄鋼の増産を試みましたが、誰も作れるほどの技術や知識がありません。
しかし、毛沢東の言いつけ通りに鉄鋼を作らなけらばならなかったので、農作物の栽培道具から鉄を取って溶かしたり、燃料確保のために中国の木が切り倒されたりしました。その結果、農作物がとれなくなり、洪水など自然災害も発生します。
大躍進政策の結果、数千万人の餓死者が出ました。
文化大革命とは
それから、大躍進政策の失敗でリーダーとしての信頼性を失った毛沢東は、もう一度トップに返り咲くために1966年に文化大革命を起こします。
文化大革命とは、毛沢東の熱狂的支持者たちを煽って、共産党や政府の知識人に対して攻撃をさせるものでした。その他にも、文化財なども壊させて社会をひっくり返させます。また、この時に下放(かほう)という、地方に強制移住して農業労働させる政策も行われており、習近平も経験しています。
余波も含めてこの文化大革命が10年くらい続いて、中国社会は大混乱になりました。
ちなみに、対外的にはソ連と関係が悪化し、1972年に日中国交正常化、1979年に米中戸口正常化を迎えます。
鄧小平の改革・開放宣言で転換期へ
1976年に毛沢東が死去して、次の指導者となったのが鄧小平でした。彼は、表立ってリーダーとなることはありませんでしたが、影でNo.2として巨大な力を持っていました。
鄧小平はまず、「豊かになれるものから先に豊かになれ」という考えのもとで、資本主義経済を導入します。
そして、1978年に鄧小平は文化大革命から中国を立て直すために、工業、農業、国防、科学技術の近代化を試みる「4つの近代化」を掲げます。また、海外外国の資本や技術の導入が認められている経済特区も制定されました。
その一方で、民主化を求めた学生たちを弾圧した天安門事件が起こり、国際社会から非難の声が上がりました。
現代の中国の基盤を作った政策と時代で、毛沢東思想とは切り離しが行われました。
GDP世界2位の大国になった中国
改革開放から中国は外国の資本や技術を取り入れながら経済成長を続けてきました。2008 年には北京オリンピックが開催され、2010年頃には日本のGDPを追い抜いて世界第2位の経済大国となりました。
また、今まで途上国として援助を受ける側でしたが、経済力を使って世界のリーダー的存在になりつつあります。特に、現代版のシルクロードを復興させて経済協力を狙う一帯一路政策の取組に積極的で、かつてないほど中国の動向に注目が集まります。
中国政治の問題点を簡単に理解
ニュースなどでよく話題になる代表的な中国政治の問題点は以下の通りです。
- 一党独裁体制による暴走への懸念
- 民主化活動の活発化
- 台湾を含む周辺国との諸問題
順に見てみましょう。
一党独裁体制による暴走への懸念
中国に限ったことではありませんが、独裁体制の場合、もしリーダーが間違った方向のまま国を動かしていても、誰も止められないという問題点があります。
民主化活動の活発化
もし、中国経済が行き詰まり雰囲気も悪くなると、不満を抱えた人が現れます。そうした人が現在の体制を倒すために民主化のデモを起こし、治安が悪くなる可能性もゼロではないです。
また、同じように中国の少数民族が発言する力を求める行動や活動を始めるかもしれません。
台湾を含む周辺国との諸問題
中国の内部政治ではなく外部政治になりますが、周辺国との緊張状態は続いています。特に領土問題で各国と問題になっています。
また、世界中が注目して大ニュースとなった香港問題や、アメリカとの関係も話題になる台湾問題などを抱えています。
まとめ
今回は中国の政治についてご紹介しました。
日本とは全く異なる政治体制であり、中国のトップになるのは大変というのが分かりますね。また、中国政治の変化も劇的でした。
ぜひ、この記事を参考にしてみてください。